津波と原発 |
佐野眞一といえば、『東電OL殺人事件』を書いたノンフィクション作家。東京電力の体質にはくわしい方ですが、今回のルポにはちょっとがっかりしました。
ゴールデン街のオカマバーのママ、キン子。
定置網の帝王と異名を取る漁師。
そして、日本共産党の元幹部だった津波博士の男性。
どの人も、佐野眞一がいかにも好みそうな取材対象者です。
でも、第一部はたった3、4日だけの現地取材だし、
第二部は、いろいろなルートで集めた情報を書き直したようなもので、全体に残念な内容だと感じました。
もちろん、文章はうまい。
正力松太郎が読売入りするきっかけが関東大震災で、当時3万部だった読売新聞を大新聞に押し上げ、日本の原子力開発の黎明期を担ったのが、読売新聞の原子力キャンペーンだった、という話などは、私が全然知らないことだったので、そこは「へ~っ」って思いました。
こういうところにこそ、まさに「佐野眞一っぽさ」があるわけですが、でも、『東電OL』のような、しつこさ、粘り強さは、あまり感じられませんでした。
でも、ぜひ次回作には、注目したいと思います。