島国チャイニーズ |
2年ほど前だったか、講談社の無料の冊子「本」で連載されていたものなので、半分以上読んだことがありましたが、また全体を通して読んでみました。
全体的に「野村進ワールド」に彩られた本。よくも悪くも、野村さんの言葉遣いが、表現が、すみずみにまで行き渡っている。その一言です。
このように自分の文体、カラーを強く打ち出せるということ。一定のファンがついているからできることなのか、あるいは強いカラーがあるからファンがつくのか、わかりませんが、とにかく、自分色があること自体、とてもうらやましいと思います。
第1章に出てくる劇団四季の中国人俳優のうち、李涛さんは私も読売ウィークリーという雑誌で、以前取材したことがあります。アンディ・ラウに似た、とても素敵な俳優さんでした。
第2章に出てくる中国人教授の中にも知った方がいます。有名な方の本の中に、自分の知り合いや、取材したことがある人が何人も出てくるっていうのは、ちょっと恥ずかしいような、不思議な気持ちです。
その他、池袋のチャイナタウンに住む人、神戸の中華同文学校の人、留学生など、日本に住むあらゆるジャンルの在日中国人にスポットを当てています。
日本にこれだけ多くの中国人が住んでいるのですから、その人々がノンフィクションなどの題材に取り上げられるのは当然の流れですが、野村さんといえば、やはり15年前に出版された『コリアン 世界の旅』が代表作。
今でこそ在日韓国・朝鮮人のイメージは激変しましたが、あの頃、表立ってこのようなテーマを取り上げることは勇気のいることだったと思います。
まえがきからしてゾクゾクします。今、読み返しても、すばらしい本だったと思います。