中国が米国を追い抜く日は来ない? |
元通産省役人で、現在は独立して中国研究を行っている津上さんの著書です。
帯には、GDPで中国が世界ナンバーワンになる日はやってこない、すでに中成長モードに入った、5%成長の実現さえ可能性に過ぎない・・・・・など、厳しい言葉が並んでいますが、一読して、これはとてもいい本だと思いました。
本書では、中期的な経済成長を阻むもの、新政権の課題が丁寧に説明されていますが、いちばん参考になったのは、第8章の少子高齢化の部分。 中国の最大のネックについての説明は信ぴょう性があります。
そして、中国がGDPで米国を抜く日は来ない、とも断言しておられます。
個人的に、何度も読み返したのは第10章、東アジアの不透明な将来 です。
中国の「国民心理」ー歴史トラウマと漢奸タブーのところは、ひざを打ちました。以下のようなことが書いてあります。(一部引用、抜粋)
『 過去1世紀以上にわたって、中国人には、「おくれて虐められる弱国」という被害者意識がある。同時に、この屈辱の記憶は領土問題などについて「ナショナリズムの空気」を国内にはらんだ。
中国人は帝国主義国を憎んでいるが、それ以上に憎んでいるのは、外敵の手先となった同胞(漢奸)である。
この伝統があるがゆえに、中国人は領土などをめぐる「ナショナリズムの空気」に逆らって、外国寄りの発言でもしようものなら、「漢奸(売国奴)」と非難されてしまう。 』
確かにそういう空気があると思いました。ですから、昨年9月の反日デモのときも、「愛国理性」という看板を持って街頭に立った若者はすごく勇気があったということですね。「冷静に!」という輪が、中国でなかなか広がらないのも、わかるような気がします。
また、私がいつも書いているように、中国人がなぜ日本のサブカルチャーにこれほど魅了されるのか?についても、本書では少し言及しています。
いろいろな示唆に富んだ本だと思います。