2023年 10月 21日
東京・中国映画週間2023の備忘録 |
先日、観に行った「東京・中国映画週間2023」の2本の映画に関して、簡単に感想などをメモしておきます。
1本目:『我愛ni』(邦題:「愛してる!」)
広東省広州に住む、ひとり者の中年の男性(常)と、未亡人の中年の女性(李)、そして、その女性が住み込んでいて、廃品回収で生計を立てている男性(謝)(謝)と、認知症を患っている妻の4人をめぐる物語。
韓国の同名コミックの映画化。とてもよい映画だった。できれば、もう一度観たいくらい。
舞台が広州だけあって、セリフは中国語と広東語のミックス。
それぞれが辛い過去、家庭の事情を抱えて、高齢に近い中年になった。
常は李のことが気になり、携帯電話をプレゼントするが、ふとしたことでケンカ。李にひどいことを言ってしまう。でも仲直りして、廃品の缶集めを手伝うように。
妻の介護をしていた謝は、思い詰めて、妻と心中することを決意。せめて死ぬ前にと、子どもや孫たちを集めて精一杯のもてなしをするが、子どもも孫も自分勝手で冷たい。
そんな子どもたちに常は腹を立てる。
中国映画で「法事」の様子が描かれるのを見たのは初めて。とても興味深い。
常は独り身の李と一緒になりたかったが、別れを切り出し、李を故郷の村に送り届ける。しかし、忘れられず、最後は一緒になる。
老人問題、貧困問題、家族のきずな、親子問題、介護問題など、さまざまなテーマが交じり合っていて、考えさせられる秀作。
ところで、映画を見終わるまで、廃品回収をしている謝が、昔、大ヒットした映画「ラ・マン」に主演していた香港人俳優のレオン・カーフェイ(梁家輝)であることに、まったく気づかなかった(!)
考えてみれば自然な広東語だったから、香港の俳優であることは当たり前だったのか。。。
2本目:『夏来冬往』(邦題:「夏が来て、冬が往く)
こちらも偶然、同じく広東省が舞台。海辺の田舎町という設定だが、広東語は出てこない。
生まれてすぐに養子に出された若い女性が、あるとき、自分の本当の家族の居場所を知り、実父の死をきっかけに、故郷で行われるお葬式に向かい、そこで実母や姉、兄たちと初めて会うという話。
監督はこれが長編映画デビュー作。経歴を見ると、日本大学映画学科に留学経験がある方のようだ。
映画の内容は淡々としていて、盛り上がる場面はないのだが、民族学的というか、比較文化学的には、とてもおもしろいシーンが多く、個人的にはとても興味深かった。
たとえば、地元の村の風習で、子どもたちは(養子に出された主人公も含めて)母親の赤い伝統衣装の一部を丸くくり抜き、それをずっと持っていること。
それらをつなぎ合わせると、伝統衣装の穴がが埋まる。
自分の分身(子ども)に衣服の一部を切り取って渡すというのは、とても面白い。
最も興味深かったのは「収養証」という養子縁組証明書。初めて見た。
最近、ちょうどNHKーBSで放送された「わが娘を手放した日 中国 一人っ子政策のその後」を見たばかりだったが、大人になって、実の両親を探す中国人は多い。
この家庭では、長男、長女は家で育てたが、次女と三女(主人公)は養子に出された。一人っ子政策のもとで、女の子は養子に出されることが多い時代だった。
また、地元の風習で、「洗三朝」という子どもの誕生を祝う行事も初めて見た。
中国は地方によって、本当にいろいろな風習があるんだな、ということを改めて実感した。
by keinakaji
| 2023-10-21 09:05
| 中国